静岡地方裁判所 昭和62年(行ウ)10号 判決 1991年9月19日
静岡県浜松市佐鳴台四丁目四番二一号
原告
氏原定雄
同所
原告
氏原やす
同所
原告
氏原強
原告三名訴訟代理人弁護士
石田享
静岡県浜松市元目町一二〇番地の一
被告
浜松税務署長事務承継者
浜松西税務署長
山本恒雄
右指定代理人
加藤美枝子
同
仲田光雄
同
田村利郎
同
金川裕充
同
間瀬暢宏
主文
一 浜松税務署長が昭和六一年三月五日付でした原告氏原定雄の昭和五九年分所得税の更正のうち納付すべき税額金一〇四万六二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、同じく原告氏原やすの同年分所得税の更正のうち納付すべき税額金四二万一六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、同じく原告氏原強の同年分所得税の更正のうち納付すべき税額金六二万九七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。
二 原告氏原やすのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
主文同旨(ただし、原告やすの納付すべき税額金四二万〇四〇〇円)
第二事案の概要
一 争いのない事実
原告らの昭和五九年分所得についての確定申告及び更正・賦課決定の経緯は別表一ないし三のとおりである。異議申立て及び審査請求は棄却された。
別表一ないし三記載の確定申告に係る譲渡所得金額、更正に係る雑所得金額は、原告らが浜北砕石株式会社から所得したものである。
二 争点
浜北砕石からの所得は、雑所得といえるか。(これが資産の譲渡による所得ではないか。資産の譲渡による所得であるとした場合、準たな卸資産の譲渡又は営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡によるものであるか。)
第三争点に対する判断
一 原告らは、同居の親族であって、先祖伝来の浜北市堀谷字奥ノ谷一六-四所在の山林外一四筆の土地(以下「本件土地」という。)を共有していた。
砕石業を営む浜北砕石は昭和五五年本件土地の岩石採取を原告らに申し込み、原告らは当初代金の一括払いを求めたが、浜北砕石は資金繰りの都合、岩石の質、将来の需要への不安等から月払いを求め、結局、本件土地の面積から算出した代金総額二億一〇〇〇万円を一〇年間の月数で割った一七五万円を代金月額とする合意が成立した。浜北砕石は、従来から砕石について土地賃貸借契約書を作成する方式を採っていたことから、原告らとの間でも土地賃貸借契約書を作成することとし、原告らは代金の一部を樹木代金名義とすることを求め、両者は、昭和五五年一一月、昭和五五年一二月一日から同五六年一一月三〇日までの期間、浜北砕石が、代金月額一七五万円(岩石代金月額一四五万円、樹木代金月額三〇万円)を賃貸借料金名義で支払い、岩石を採取する旨の「土地賃貸借契約書」(甲二)を作成して契約を締結し、その後、岩石採取の許可の関係で長期間の契約が必要となり、同年一二月に改めて、期間を一〇年とする同一内容と契約書(甲一)を作成し、以後昭和五九年中まで毎年期間一年の同一内容の契約を締結してきた。契約に従い、浜北砕石は岩石の採取を行い、代金を原告らに支払ってきた。
(甲一ないし四、乙四及び五、証人鈴木、原告本人)
二 原告らの浜北砕石からの昭和五九年分所得は、資産である岩石の売買・譲渡によるものである。「土地賃貸借契約書」が作成されているが、売買の事実を左右するものではない。岩石採取権の設定とみることはできない。
毎年の契約は当初と同一内容であって、月額代金は代金総額を月割りにして定めているのであるから、岩石の譲渡は一回的に行われ、代金が分割払いとされたとみるべきである。岩石は原告ら先祖伝来のものであって、転売目的で取得したものではなく、浜北砕石の申し込み以前に売却の準備をしていたとは認められないのであるから、岩石の譲渡は、準たな卸資産の譲渡にも当たらず、営利を目的として継続的に行われたとも認められない。
浜北砕石からの所得は、雑所得ではなく、譲渡所得である。
三 浜北砕石からの所得を譲渡所得とし、別表一ないし三の数値を基礎として算出すると、原告らの納付すべき税額は、主文一記載の金額となる。
(裁判長裁判官 大前和俊 裁判官 安井省三 裁判官 水野智幸)
別表一
原告氏原定雄関係
<省略>
別表二
原告氏原やす関係
<省略>
別表三
原告氏原強関係
<省略>